不眠に効く漢方(3)|虚証・中間・実証で判断する!不眠に効く漢方薬

不眠に効く漢方(3)|虚証・中間・実証で判断する!不眠に効く漢方薬

漢方では、その人の体質を「証」に分けて、処方する漢方薬を診断します。

 

その元となるのは、「気・血・水」。「気」は、体を動かす基本となる生命エネルギーのこと。「血」は、血液。「水」は、汗やリンパ液などの体液全般を指します。

 

人間の体は、この3つのバランスで成り立っています。
別項目でご紹介した、漢方処方例不眠に効く漢方(2)|あなたの不眠に漢方薬は?体質・症状別処方例は、少し詳しすぎて、理解しにくい場合は、この証から不眠に効く漢方薬を判断するほうが簡単です。

 

まず、ご自身の「証」に合う漢方薬の目安をつけることから、始めてみましょう。


まずは自分の証を知ろう!

「証」は大きく分けると、3タイプあります。

 

体質的に、気血水のバランスが取れている人は、「実証」。基本的に、元気で胃腸も丈夫。疲れにくい人はこの体質です。

 

これと真逆で、「気血水」のバランスが悪い方は、「虚証」。ふだんからあまり元気がなく、血色も悪い虚弱体質です。

 

この2つの中間が、「中間」タイプ。体つきは普通ですが、たまにバランスが崩れる体質の方です。

 

ご自身は、どのタイプでしょうか? 「証」が分かったら、それぞれの証に合う不眠漢方薬を選びましょう。

 


「証」で変わる!不眠に効く漢方薬

漢方薬の効果を得るには、証に合うものを選ぶ必要があります。その理由は、証に合うものしか、その人には効果がたいため。

 

例えば、「虚証」の人に、「実証」の薬を処方しても、全く効果がありません。その反対も、同じ。

 

馴染みのある漢方薬でいうと、風邪のときに飲む「葛根湯(かっこんとう)」は、実証の人が飲む薬です。虚証の人が飲んでも、効き目がありません。

 

「漢方が効果がない」といわれやすいのは、実際の「証」が、正しく判断されていないケースが多いのも一因です。まずは、正しく「証」を理解することが必要です。

 

虚証の不眠に効く漢方薬

 

「虚証」の方の不眠に合う漢方薬は、3つあります。

 

温胆湯(うんたんとう)

 

 

不眠に加えて、胃腸が弱っている上に、体力がない方。心身共に疲れ切っている方に合う処方です。不眠以外に出ている症状に、下記のものがある方にも向いています。

 

食欲不振、動悸、うつ気味、パニック障害

 

加味帰脾湯(かみきひとう)

 

 

 

不安症や緊張状態があり、のぼせ、イライラなどがある方に向いている処方です。

 

不眠以外に出ている症状
精神的に不安定、熟睡できない

 

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

 

 

もともと胃腸が弱く、夜になると神経が高ぶる方に向いている処方です。

 

不眠以外に出ている症状
興奮しやすい、イライラする、昼と夜が逆転する(夜眠れない)

中間タイプの不眠に効く漢方薬

 

中間タイプの不眠にも、3種類の処方があります。

 

加味逍遥散(かみしょうようさん)

 

 

精神的なストレスが強く、神経が休まる暇がない。イライラして仕方がない状態の方に向いています。早期覚醒してしまう不眠タイプにも、この漢方薬を用います。

 

不眠以外に出ている症状
冷え性、うつ気味、更年期障害が出ている

 

葛根黄連黄?湯 (かっこんおうれんおうごんとう)

 

 

激しい運動が続いて、発汗する機会が多い方に向いています。

 

不眠以外に出ている症状
口内炎がある、胸の周辺が息苦しい、のぼせ

 

茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)

 

胃炎や咽喉のつかえなど、体調不良が元の不眠に効く処方です。

 

不眠以外に出ている症状
のどがつかえる、動悸がある、めまい、胸焼けする

 

実証の方の不眠に効く漢方薬

 

体質的に丈夫な「実証」の方の不眠には、以下の2つの処方があります。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

 

 

 

神経が高ぶりを抑えて、心身の状態を整える処方です。

 

不眠以外に出ている症状
熟睡できない、うつ気味、不安感が強い、焦燥感がある、便秘気味、のぼせる

 

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

 

 

 

体にたまった熱を取る処方で、高血圧症や更年期障害がある方にも向いている処方です。

 

不眠以外にでている症状
のぼせる、肩こりがひどい、イライラする、めまい、動悸がある

 

参考書籍:図解 東洋医学のしくみと治療法がわかる本

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